2008年版バフェットの手紙(9)
ウォーレン・バフェット氏がバークシャーの株主にあてて書いた手紙の翻訳記事の続きです。
原文はこちら→2008年版会長の手紙
昨年は、この分野でも比較的大規模な動きがあったようです。
投資
会計ルール上の理由で、今年は当社の保有する普通株式を2種類に分けました。下の表にはその第1の区分を示してあり、当社の貸借対照表上に市場価格で記載され、年末時点で5億ドル以上の価値がある投資については個別に表示してあります。

※ 当社の実際の購入価格であり税金計算の基礎でもあります。GAAPの「コスト」はいくつかの場合について簿価の切り上げや切り下げが要求された為、これとは異なっています。
これに加えて、当社は現在では「持分価値」――[当社の購入コスト]+[当社が購入して以降の(投資先企業の)留保利益]-[その留保利益が当社に配当として支払われたと仮定した場合の税金]――で帳簿に記載されている、ムーディーズ社とバーリントン・ノーザン・サンタフェ社の株式を保有しています。この会計上の取り扱いは通常、投資先企業の持分比率が20%に達した場合に要求されます。
当社はムーディーズの社15%の株式を何年か前に購入し、それ以降は1株も買っていませんでした。しかしムーディーズは自社株の買い戻しを行なって来て、2008年の後半までに、その買戻しによって当社の持分が同社の発行済株式の20%を超えるところまで、同社の発行済株式数が減少しました。バーリントン・ノーザン社もまた自社株の買い戻しを行なってきましたが、当社の持分が20%まで増加したのは主に当社がこの株式を買い続けたことによるものです。
会計ルールが変更にならない限り、これらの株式は市場価格がどうなろうと「持分法会計」価値で当社の貸借対照表上に表示されることになります。これらの投資先の利益の当社持分は通常、当社の四半期または年間利益に(適用される税額控除後)含まれることになります。
私はこの報告書の初めの方で、昨年私は職務上の大きな失敗を1つ(あるいはもっとかもしれませんが、この1件は飛び抜けています)犯したと申し上げました。チャーリーや他の誰に急かされたわけでもなく、私は石油やガスの価格が天井近くだった時にコノコ・フィリップスの株式を大量に買ってしまいました。私は昨年の後半に起こったエネルギー価格の劇的な暴落を全く予期していませんでした。私は将来、石油が現在の40ドル~50ドルという価格よりもずっと高くなる可能性は依然として高いと信じています。しかし現時点では、私は完全に間違っていました。更に、たとえ価格が上がったとしても、私の最悪のタイミングでの購入はバークシャーに数十億ドルものコストをかけてしまったのです。
私は他にも既にそれと認識できる失敗をしました。これらは比較的小さなものですが、しかし不運にもあまり小さくはありません。2008年の間、私は私には安く思えたアイルランドの2つの銀行の株式に2億4400万ドルを費やしました。年末時点で、当社はこれらの保有株式を時価の2,700万ドルまで減損し、89%もの損失となりました。それ以降も、この2つの株式はさらに値下がりしています。テニスの観衆なら私の失敗を「アンフォースド・エラー(自分からしてしまうミス)」と呼ぶでしょう。
昨年のプラスの側面として、当社はリグレー、ゴールドマン・サックス、ゼネラル・エレクトリックが発行した固定利付証券を合計145億ドルで購入しました。私達はこの投資それ自体を満足以上のものにしてくれた高い直接利回りを得られるこの契約を、とても気に入っています。しかしこれらの3つの購入の各々とともに、当社はおまけに、株主として相当額の資本参加が出来る権利を手に入れました。この大規模な買付け資金を捻出する為に、私はずっと持ち続けておきたかった数社の保有株式を部分的に売却する必要がありました(主にジョンソン・エンド・ジョンソン、プロクター&ギャンブル、そしてコノコ・フィリップスの株式です)。しかしながら、私は常にバークシャーを十分すぎる程の現金を持って運営することを――皆さんに、格付機関に、そして私自身に――固く誓約してきました。私達は明日の債務の支払いの為に見知らぬ人の親切を当てにしたくはありません。たとえそう選択することを強いられたとしても、私は余剰利益を上げる機会の為に、たった一晩の安眠さえも引き換えにしたくはないのです。
投資の世界は過小評価しすぎるリスクから過大評価しすぎるリスクへと遷り変わりました。この変化は小さくありません。振り子の振れ幅はとても大きな弧を描いています。2、3年前には、いくらリスクゼロの政府短期債がゼロに近い利回りで、長期債もわずかな収入しか得られないとはいえ、良格付の地方債や社債が今日の様な利回りになろうとは、考えられない様な状況でした。この10年間が金融の歴史に書かれる時には、それはきっと、1990年代後半のインターネット・バブルと2000年代初頭の住宅バブルとして語られることになるでしょう。しかし2008年後半の米国債バブルもほとんど同じくらい、驚くべきことだったとみなされるかも知れません。
現在の利回りで現金同等物や政府長期債にしがみつくことは、長期間続けるつもりであればほぼ間違いなく、恐ろしい方法です。もちろん、こうした商品の保有者は、金融の混乱が強まっていくにつれ、この方法に従うことでますます快適に――実際には、ほとんど自己満足に過ぎませんが――感じていることでしょう。彼らはコメンテーターが「現金は王様だ」とのたまうのを聞いて、たとえその素晴らしき現金が無きに等しい収入しか得られず、その購買力は長期的には確実に失われていくのであっても、自分達の判断が正しいと確信を深めるのです。
しかし、他人からの同意を得ることが投資の目標ではありません。実際、他者の同意は、脳を鎮静させ、新しい事実や先に下した結論の再点検を受け入れにくくしてしまう為、しばしば非生産的なものとなります。他者から賞賛されるような投資には気をつけて下さい。素晴らしい行動は通常、あくびをもって迎えられるのです。
今年、バフェット氏が犯してしまったいくつかの失敗として、コノコ・フィリップス株の高値掴み(同社は石油米国第3位の大手で、原油価格がピークだった頃に大量購入してしまった)と、アイルランドの銀行で約90%の損失(!)を挙げています。
額としては比較的小さいといっていますが(それでも約200億円以上の損失)、90%もの値下がり。
バフェット氏が買った株でここまで値下がりするというのは聞いたことがありません。
バフェット氏が買った株でここまで値下がりするというのは聞いたことがありません。
それから、ジョンソン・エンド・ジョンソンの持ち株を半分売却、P&Gも一部売却というニュースが出ていましたが、
この状況であえてこれらの銘柄を売った理由は、
これまた大きな話題になっていたリグレー、GS、GEへの出資の資金捻出のためだったとのことです。
この状況であえてこれらの銘柄を売った理由は、
これまた大きな話題になっていたリグレー、GS、GEへの出資の資金捻出のためだったとのことです。
バフェット氏は「これらの銘柄を持ち続けておきたかった」と述べていますが、
別の場で「これらの銘柄は割高」発言もしていたようですし、
むやみに借入をせず、現金に余裕を持って運営をするために部分売却となったようです。
別の場で「これらの銘柄は割高」発言もしていたようですし、
むやみに借入をせず、現金に余裕を持って運営をするために部分売却となったようです。
その他のトピックスとしては、
これまで普通株ポートフォリオに入っていたムーディーズ(格付会社)と
バーリントン・ノーザン・サンタフェ(鉄道会社)の2社に対する
バークシャーの持分比率が20%を超えたため、持分法が適用になったということです。
これまで普通株ポートフォリオに入っていたムーディーズ(格付会社)と
バーリントン・ノーザン・サンタフェ(鉄道会社)の2社に対する
バークシャーの持分比率が20%を超えたため、持分法が適用になったということです。
このムーディーズについてですが、昨年読んだメアリー・バフェットとデビッド・クラーク著の
「Interpretation of Financial Statements」(最近、邦訳本も出版されていました)の中で
同社について「格付会社は事業運営にほとんど資産を必要とせず、自社株買いを行なった結果、見た目は債務超過の状態になった」という内容の記述がありました。
「Interpretation of Financial Statements」(最近、邦訳本も出版されていました)の中で
同社について「格付会社は事業運営にほとんど資産を必要とせず、自社株買いを行なった結果、見た目は債務超過の状態になった」という内容の記述がありました。
それで気になって同社の財務諸表を入手してみたところ、果たしてその通りになっていました。

下の方に3つ赤い楕円で印をつけてあるのが、上から順に利益剰余金、自己株式、株主資本(自己資本)です。
見てのように、利益剰余金を大幅に超える額の自己株式を取得した結果、株主資本がマイナス(括弧つきがマイナスの表示)になり、いわゆる「債務超過」の状態になっています。
もちろん、同社の経営陣がそう判断して行なっている訳ですし、
実際事業運営上これでも問題はないのでしょうが、
それにしてもこれを見た時、行き過ぎた株主価値至上主義の極みのような気がして、何とも言えない気持ち悪さを感じてしまいました・・・。
実際事業運営上これでも問題はないのでしょうが、
それにしてもこれを見た時、行き過ぎた株主価値至上主義の極みのような気がして、何とも言えない気持ち悪さを感じてしまいました・・・。
これでこの章は終わりです。
(続く)