babooconの雑記

東京都在住、アラサー個人投資家のつれづれ日記。

2008年版バフェットの手紙(10)-2

ウォーレン・バフェット氏が毎年、バークシャーのアニュアル・レポートの中で
株主にあてて書いている手紙の2008年版、その翻訳記事の続きです。


原文はこちら→2008年版会長の手紙



今回は引き続きデリバティブについての説明の章です。



 通常の株式や債券の取引では数日以内に一方は現金を受け取り、もう一方は証券を受け取って決済が完了します。それゆえカウンターパーティー・リスクはすぐに消滅し、それは信用問題が累積しないことを意味します。この迅速な決済プロセスが市場を完全な状態で維持するための鍵なのです。実際、それこそがNYSENASDAQが1995年に決済期間を5日間から3日間に短縮した一つの理由なのです。


 対照的にデリバティブ取引は、しばしば何年も、あるいは何十年も決済が行なわれず、その間にカウンターパーティーはお互いに巨額の請求権を積み上げていくということが起こります。「紙切れの」資産と負債――しばしば定量化するのが困難になる――は財務諸表の重要な部分を占めるようになりますが、これらの項目は何年も経たないと有効にならないのです。それに加えて、ぞっとするような相互依存の網が巨大金融機関の間で拡大しています。莫大な数の債権と債務が、他の手段でも高レバレッジをかけることをしがちな数社の巨大なディーラーの手に集中しました。トラブルを避けようとする参加者達は、性病を避けようとする者と同じ問題に直面しました。すなわち、あなたが一緒に寝ている人は、あなたとだけでなく他の人達とも一緒に寝ている人なのです。


 私達のたとえ話を続けるならば、色々な人と寝ることは巨大なデリバティブの取引者にとっては実際に役に立ちます。何故ならば、それによってもしトラブルが起こった場合、政府の援助が保証されるからです。言い換えれば、近隣全体を汚染する問題を抱えた企業だけが――その名前は出しませんが――確実に国の関わる問題になるからです(その結果は、私も申し上げるのは悲しいのですが、妥当なことなのです)。このいらいらさせるような現実から、借入金を積み上げ、巨大かつ理解不能デリバティブ取引を指揮する野心的なCEO達のための「企業生存の第1法則」が導かれます。すなわち、そこそこの無能さではまったく無理で、とんでもない失敗が必要なのだ、ということです。


 私が表現した破滅の原因を考慮すると、みなさんは何故バークシャーが251のデリバティブ契約(ミッドアメリカン社で業務上の目的で使用されているものと、ゼネラル・リーに残っているわずかな契約を除く)を結んでいるのか不思議に思われるかも知れません。その答えは簡単です。私は当社が所有している契約はどれも初めから価格が、時には劇的に、誤ってつけられていると信じています。私自身が、巨大金融組織のCEOはみな、最高リスク責任者でもなければならないという私の信条と首尾一貫した責任の下に、これらのポジションを開始し、そして監視しています。もし私達がデリバティブでお金を失うことになれば、それは私の責任です。


 当社のデリバティブ取引は、契約が開始した時にカウンターパーティーが当社に支払いをする必要があるものです。それゆえバークシャーは常にそのお金を手にしていることになり、実質的に、カウンターパーティ・リスクは存在しないと考えることが出来ます。年末時点で、当社に対して支払われた額から当社が支払った損失額を引いた金額――デリバティブの「フロート」ということが出来ます――は合計で81億ドルでした。このフロートは保険のフロートとよく似ています。もし当社が元の取引で損益なしの状態であれば、長期間にわたって自由にそのお金を使うことが出来るでしょう。私達の予想では、確実とは程遠いですが、損益なし以上の結果が得られ、そしてその資金に対して得られる相当額の投資収益は二重に美味しいものとなるでしょう。


 市場が当社の予想に反して動いたとき、当社はごくわずかなパーセンテージの契約しか、担保を差し入れる必要がありません。昨年の第4四半期に生じていたような混沌とした状況下でさえ、当社の有価証券ポートフォリオの1%以下しか担保に差し入れる必要がありませんでした(私達が担保を差し入れる時、私達はそれを第3者の元に預け、一方で預けた有価証券に対する投資利益は手元に留めておくことが出来ます)。2002年の当社の年次報告書で、私達は担保差し入れ要求がつくり出す致命的な脅威について警告しましたが、それは昨年、様々な金融機関において私達が現実の例として目の当たりにすることになりました(そして、その問題に関してですが、コンステレーションエナジー社は倒産まであと数時間という所でミッドアメリカン社が救済措置を実行しました)。



デリバティブ契約には満期まで何年も、何十年もかかるものがあり、
その間にカウンターパーティー(取引を行なう相手)が倒産するなどして
契約不履行になってしまうというリスクがあります。

バークシャーでもデリバティブ契約を行なっていますが、
バフェット氏がバークシャーで手がけているものはほとんどが、
取引開始時点で相手からプレミアムを受け取るものなので、
その様なカウンターパーティー・リスクは実質存在しない、と説明しています。

なるほど、と思ったのは、バフェット氏がデリバティブを行なっている理由は、
契約開始時点で受けとるプレミアムを保険会社が生み出すのと同じような「フロート(滞留資金)」としてみている、ということです。

たとえデリバティブ契約が損得なしで終了しても、満期までの間自由に使えるその資金で投資収益を上げることが可能になる、というわけです。


デリバティブは危険なものだと認識していながらも、確率的に勝算があるリスクを積極的に引き受け、集めた資金を投資で増やすというのは、
まさにバフェット氏が保険会社で行なってきたことと本質的には変わらないのですが、それにしても目のつけ所が違うな、と感心しました。


この手紙の翻訳も大分終わりに近づいてきましたが、デリバティブについての話はまだ続きます。

もうしばらく、お付き合い下さい。