babooconの雑記

東京都在住、アラサー個人投資家のつれづれ日記。

2008年版バフェットの手紙(10)-4

ウォーレン・バフェット氏が毎年、バークシャーのアニュアル・レポートの中で
株主にあてて書いている手紙の2008年版、その翻訳記事の続きです。


原文はこちら→2008年版会長の手紙



長かったデリバティブについての章も、今回が最後です。

今回は、前回でも少し触れられていたオプションなどの金融商品のフェア・バリューを計算するのに
広く用いられているブラック・ショールズ式が、
長期間の契約の現在価値を評価するのには適していないことをわかりやすい例を用いて説明しています。



 ブラック・ショールズ方程式は金融界における聖書のような地位に近づいてきており、そして当社ではそれを財務諸表作成上の目的で株式プット・オプションを評価する際に使用しています。その計算の際のカギとなる数値は、契約の満期期間とストライク・プライス(オプションの権利行使価格)、アナリストのボラティリティの予想値、金利そして配当金です。


 しかしながら、方程式をより長い期間について適用すると、馬鹿げた結果が生み出されてしまう可能性があります。公平を期すために言いますが、ブラックとショールズはほぼ確実に、この点をよく理解していたでしょう。しかし彼らの献身的な信奉者達は、2人が初めてこの方程式を公表した時に付け加えた注意事項を全く無視しているのかも知れません。


 ある理論を極端な例で試してみることはしばしば有効となります。そこで、私達がS&P500種のプット・オプションを、期間100年間、10億ドル、ストライク・プライスは903ポイント(2008年12月31日時点の同指数の水準)で売ったと仮定してみましょう。私達が結んだ長期の契約期間中のボラティリティの予想値を使用するとともに適切な金利と配当を想定すると、私達はこの契約に対するブラック・ショールズ方程式による「妥当な」プレミアムが250万ドルであると導き出せるでしょう。


 そのプレミアムの合理性を判断するためには、私達はS&P指数が今から1世紀後に今日よりも低い値をつけているかどうかを査定する必要があります。確実に、その時のドルは現在の価値よりもごく小さな価値しかないでしょう(たった年率2%のインフレでも、100年後にはおよそ14セントの価値しかない計算になります)。したがって、このことは指数の額面価値を押し上げる要因になるでしょう。しかしながら、さらに重要なことは、100年間の留保利益は指数に含まれるほとんどの企業の価値を非常に大きく増加させるだろうということです。20世紀中、ダウ・ジョーンズ工業平均株価は約175倍になり、その主な要因はこの留保利益によっていたのです。


 あらゆることを考慮した上で、私は100年の間に指数が下落する確率は1%よりもはるかに少ないと信じています。しかし、その数字を用いて、最も起こり得そうな下落――万一に起こるとすれば、ですが――が50%であると想定してみましょう。私達の契約についての数学的な損失の期待値は、500万ドルとなります(10億ドル×1%×50%)。


 しかし私達が理論的なプレミアムの額である250万ドルを前払いで受け取っているなら、私達は損失の期待値を埋め合わせるために、わずか年複利0.7%で投資すればよいことになります。それ以上を上回る投資収益は全て私達の利益になるのです。100年間、金利0.7%でお金を借りてみたくはありませんか?


 私の示した例を最悪のケースの観点から見てみましょう。私の想定が正しければ99%の確率で私達は何も支払わなくてよいでしょう。しかし残り1%の確率に当たるという最悪のケースでさえも――つまり、10億ドルの全額を失うと想定しても――私達の借入コストはわずか6.2%にしかならないのです。明らかに、私の想定がおかしいか、または方程式が不適切なのです。


 私の極端な例においてブラック・ショールズ方程式によって示された馬鹿げたプレミアムは、方程式の中にボラティリティが含まれている事、そしてボラティリティはその株式が過去数日間、数ヶ月間、あるいは数年間でどれだけ揺れ動いたかで決定されるという事実によって引き起こされたのです。この測定基準は100年先のアメリカ企業の確率重みつきでの価値の範囲を見積もることとは関連がないのです(もしよろしければ、躁鬱気味の隣人から毎日農場の価格を入手し、それからこの変化し続ける価格から計算されたボラティリティを今から1世紀先のその農場の確率重みつきでの価値の範囲を予測する方程式の重要な要素として使うことを想像してみて下さい)。


 歴史に基づくボラティリティは短期間のオプション価格を見積もるのには有用な――しかし絶対安全とはほど遠い――概念ですが、その実用性はオプションの存続期間が延びるにつれ、急速に減っていきます。私の意見では、ブラック・ショールズ方程式による当社の長期プット・オプションの現在の評価は当社の負債を過大評価しています。ただし、その過大評価の程度は契約が満期に近づくにつれ減少していくでしょう。


 たとえそうであっても、私達は長期の株式プット・オプションに係る財務諸表上の負債を見積もる際には、ブラック・ショールズ方程式を使い続けていきます。この方程式は世間一般の通念となっており、私がどのような代わりの式を用いても、極端な疑念が生じてしまうでしょう。それはまったく理解できることです。難解な金融商品について自分勝手な価値評価をでっち上げているCEO達は、まず保守的な側の間違いをすることがありません。楽天主義者のクラブはチャーリーや私が加わりたくないものです。



バフェット氏のたとえ話は、毎回、論理的で分かりやすいです。

ある理論の有効性を確かめるには、極端な例を使ってみて、
その結果が『常識で考えて』妥当かどうかをみてみれば良いと述べています。

本文中で説明している様に、バフェット氏はブラック・ショールズ式は長期のオプションを評価するのに妥当ではないと考えているようですが、それでもこの方程式を使い続けると言っています。

重要なことはどの式を使うかではなく、前回までで説明していたように、
実質的なリスクを低く抑え、コントロール出来るかどうか、ということなのだと思います。


これでデリバティブについての章は終わりです。


次回はいよいよ最後の章、株主総会についての案内です。