babooconの雑記

東京都在住、アラサー個人投資家のつれづれ日記。

2009年版バフェットの手紙(4)

前回の記事からずいっぶんと間が開いてしまいましたが、ウォーレン・バフェット氏がバークシャー・ハザウェイ社の株主に宛てて毎年のアニュアル・レポートの中で書いている手紙の最新版を翻訳してみようという試みの続きです。

正直、記事を書くモチベーションが下がりっぱなしですが、中途半端に終わらないままも嫌なので、ここらでボチボチ再開しようと思います。

原文は下記のリンクから閲覧できます。



前回の記事のリンクです。



保険業(続き)

それでは広告宣伝に年間8億ドルの予算を組んでいることで皆さん全員に知られているGEICO(ガイコ)からみていきましょう(自動車保険業界では第2位の広告主の予算額に2倍近い差をつけています)。
GEICOは18歳で同社に入社し、現在66歳のトニー・ナイスリーによって運営されています。トニーは今でも毎日タップダンスをしながらオフィスに出社しています。79歳の私がちょうどそうであるように。私達は二人とも大好きなビジネスで仕事をすることが出来て幸運だと感じています。

GEICOの顧客もまた、同社に対して暖かい感情を抱いています。ここに証拠をお見せしましょう。バークシャーが1996年にGEICOの支配権を獲得して以来、同社の市場シェアは2.5%から8.1%に上昇しました。保険契約者の純増数にして700万人です。もしかすると私達の顧客は同社のヤモリ(訳注:GEICOのマスコットキャラクター。ヤモリの英語名geckoと社名のGEICOがかけてある)が可愛いという理由で同社にコンタクトをとったのかも知れませんが、私達と保険契約を結んでくれたのは大切なお金を節約するためです(おそらく、これをご覧のあなたもそう出来るかも知れません。1-800-847-7536に電話をかけるか、www.GEICO.comにアクセスしてみてください)。そして我々の顧客は同社の価格だけではなくサービスも気に入ってくれているため、私達との契約を継続してくれているのです。

バークシャーはGEICOを2段階かけて買収しました。1976年から1980年にかけて、私達は同社の約3分の1の株式を4700万ドルで取得しました。長年にわたって、同社が自己株式を大量に買い戻したために私達の持分比率は追加の株式取得を一切することなしに約50%まで高まりました。そうして、1996年1月2日に、私達はGEICOの残り50%の株式を現金23億ドルで、当初の取得コストの約50倍で買収しました。

ウォール街の古いジョークが私達の経験に近いものを言い表しています。

顧客 「XYZ株を5ドルの時に薦めてくれてありがとう。今は18ドルまで上がっているそうじゃないか。」

ブローカー 「はい、でもこれは始まりにすぎません。実際、この会社は今とても好調なので、18ドルで買った方があなたがこの株を買った時よりもさらに良いですよ。」

顧客 「くそっ、それなら今まで買わずに待っているべきだったよ。」

GEICOの成長は2010年は緩やかになる見通しです。実際、米国の自動車登録台数は自動車販売の不調のために減少しています。さらに、高い失業率のために、保険をかけずに運転するドライバーが増加しています。(これはほとんどの地域で違法なことですが、もしあなたが職を失ってそれでも運転したいとすればどうするでしょうか・・・)しかしながら、私達の「低コスト提供者」としての地位は、将来きっと多くの顧客獲得をもたらしてくれることでしょう。1995年、GEICOは国内第6位の自動車保険会社でした。それが現在では第3位です。同社のフロート(滞留資金)は27億ドルから96億ドルに増加しました。そして同様に重要なことですが、GEICOはバークシャーが買収して以降の14年間中13年において保険引受利益を上げているのです。

私は1951年の1月に20歳の学生としてGEICOを初めて訪ねた時、この会社にすっかり興奮しました。ありがとう、トニー。私は現在、あの時よりもっと興奮しています。

(続く)

今回はここまでです。

保険のGEICOはバフェット氏について語られる時には必ずと言っていい位登場する企業ですが、実にバフェット氏が20歳の時からの付き合い(途中株を持っていない時期はありましたが)ですから、足掛け60年近いわけです。

約60年前にバフェット氏が魅力を感じた直販による低コストの保険会社という強みが今でも(インターネットの出現で多少形を変えながらも)残っているというのはまたすごいことだと思います。

それにしても最初にGEICOに投資して20年後に50倍にもなってから完全子会社化してしまうあたり、本当にご執心だったんですねえバフェットさん。もちろんその後のGEICOの業績をみればそれが間違いではなかった訳ですが。

Myポートフォリオ(2010年6月30日時点)

6月は昼間は仕事で忙しいわ、夜はワールドカップサッカーの(TV)観戦で寝不足気味になるわで、体力的にはきつい一ヶ月でした(笑)

今月は3月以来の売買、もとい買買(笑)をしました。


6/7 8410 セブン銀行 @160,800円 1株買い(手数料\200)


6/30 3377 アイケイコーポレーション @27,000円 1株買い(手数料\100)


セブン銀行については今更僕などが書くまでもないかも知れませんが(笑)、セブンイレブンを中心としたATM事業という興味深いビジネスモデルで上場時から注目していました。ここに来て減収減益予想で叩き売られていたので、一単元新規投資に踏み切りました。

それからアイケイコーポを1株だけ買い増し。相変わらず株価は底を這ってる感じですが、月次や四半期決算を見る限り最悪期は脱しているのかな、というところでしょうか。業績が戻ってくることを考えれば、今の株価は十分に安いと思います。

日経平均は月末に年初来安値を更新したようで、ニュースでもしきりに後付け(笑)の説明がされていました。

ギリシャの破綻からEUへの波及で実体経済に深く影響は出てくる懸念はありますが、市場全体が恐怖で投げ売りしてくれる時こそ最高の投資のチャンスと信じて、投資していきたいと思います。

コード銘柄保有株式数取得単価現在値
2193クックパッド23,9164,120
2315SJI185,82818,200
2391プラネット600532570
25935伊藤園-優3001,124960
2685ポイント203,7004,880
2762三光MF158,00075,000
3377アイケイコーポ927,20027,300
4659エイジス1001,4701,385
6155高松機械100950295
6156エーワン精密1208,951288,000
6730アクセル1003,2852,951
7599ガリバー106,9803,780
7839SHOEI9001,210900
8410セブン銀行1161,000161,400
8473SBI1018,49011,210
9437NTTドコモ1128,000134,500
9999PF株式合計2,1563,539,0113,081,640

Myポートフォリオ(2010年5月31日時点)

今月は4月の強気相場を逆回転させたような相場でしたね。

僕のポートフォリオも先月末比-9.9%となり、4月分どころか年初来からの上昇分も吐き出してしまったみたいです。

逆に投資意欲の方はモリモリ湧いてきた・・・といいたい所ですが、
今月は肉親に不幸があり少々混乱気味で・・・・・・。

とはいえ、投資は生活に支障のない範囲で変わらず続けて行くつもりです。
資金チャージも月末近くにしたのですが、結局一つも買えず終いでした。

アクセルや監視中の某銀行株が来期減益予想を出して叩き売られたり、その他にいくつも買いたいものはあったんですが・・・。

指値を欲張り過ぎて買い逃すのはいつもの悪い癖かも知れません。

まあ、6月以降もまだまだチャンスはあるかも知れないのでゆっくり行きます。


コード銘柄保有株式数取得単価現在値
2193クックパッド17,8327,620
2315SJI185,82819,900
2391プラネット600532580
25935伊藤園-優3001,124954
2685ポイント203,7005,200
2762三光MF158,00082,500
3377アイケイコーポ827,21327,100
4659エイジス1001,4701,465
6155高松機械100950321
6156エーワン精密1208,951308,000
6730アクセル1003,2852,862
7599ガリバー106,9802,864
7839SHOEI9001,210913
8473SBI1018,49015,530
9437NTTドコモ1128,000135,300
9999PF株式合計2,1533,350,9152,978,760

Myポートフォリオ(2010年4月30日時点)

今年に入ってからすっかりポートフォリオの状況更新をサボっていました(汗)

まあ、売買、というか買買(笑)も頻繁ではなく大きく動かすことは滅多にないので更新も上場企業と同じ四半期に一度くらいでも構わないかな、なんて思ってるんですが(爆)

今年に入ってからの売買は以下の通りです。


1/15 3377 アイケイコーポレーション @27,500円 3株買い (手数料¥100)

2/16 3377 アイケイコーポレーション @26,100円 3株買い (手数料¥100)

2/26 4659 エイジス @1,468 100株買い(手数料¥200)

3/24 2193 クックパッド @7,780円 1株買い(S株、手数料¥52)

上記の通り、バイク買取りのアイケイコーポレーションを買い増し、棚卸サービスのエイジスレシピ検索サイト運営のクックパッドに新規投資です。

エイジスはコンビニやスーパーなどを中心に実地棚卸を店舗従業員に代わって行なうサービスを提供しています。

ニッチで地味~な事業ですが、圧倒的シェアを誇っていて2009年3月期まで少なくとも15年増収増益を続けて来ていて、利益面でもほぼ毎年の様に伸ばして来た隠れた優秀企業です。

一昨年の金融危機後の景気の急激な落ち込みを受けて業績も落ち込み、株価も売り叩かれていたので一つ買ってみました。

クックパッドについてはTwitter経由で知ったのですが、ユーザーが無料で投稿・閲覧できるレシピの累積数が約70万点、月間利用者数が850万人超(2010年1月時点)と料理レシピサイトとしては日本最大規模を誇っています。

収益構造としてはマーケティング支援(食品会社・料理案連器具メーカーなどが消費者に対して製品の魅力を伝える際にクックパッドを利用するユーザーに対するアンケートやサイト検索傾向の情報提供などを行なう)とサイト上の広告収入がメインですが、有料会員サービスが急激に伸びてきているようです。

事業としては申し分ないですが、株価の方もそれを織り込んでいて、はっきり言って完全に割高です。

あえて今の株価で手を出すこともないですが、こういう面白そうな企業を指をくわえて見ているだけなのもシャクで、単元未満株で1株だけ(一単元は100株)買ってみました(笑)

3月~4月は相場も堅調で、ちょうどキャッシュポジションも使い切ったので眺めてるだけでしたが、今まで放置されていた新興市場にも資金が回ってきたみたいですね。

6156 エーワン精密なんかは今度カンブリア宮殿で取り上げられるそうで、そのせいなのかどうなのか、ずーっと底をハイハイしていたのがここに来て爆騰していますが、某掲示板などを見ていると何を今さら(笑)な感じで、「ああ、買われる時なんて何でもいいから理由づけできりゃいいんだな」というのを実感しています。


コード銘柄保有株式数取得単価現在値
2193クックパッド17,8328,400
2315SJI185,82822,980
2391プラネット600532611
25935伊藤園-優3001,124999
2685ポイント203,7006,090
2762三光MF158,00082,100
3377アイケイコーポ827,21333,300
4659エイジス1001,4701,655
6155高松機械100950346
6156エーワン精密1208,951357,500
6730アクセル1003,2853,090
7599ガリバー106,9803,470
7839SHOEI9001,210985
8473SBI1018,49020,400
9437NTTドコモ1128000146400
9999PF株式合計2,1533,350,9153,306,180

近況報告

今年に入ってからブログ記事の更新頻度がガクンと落ちてしまいました。
 
いくつか理由はありますが、直接的な原因は主に2つです。
 
Twitterを始めたこと
 
昨年の12月からTwitter(http://twitter.com/)でつぶやいています。
 
Yahoo!ブログ以外で交流があるブロガーさんが始めたのにつられて僕も始めてみましたが、
これがハマる。
 
気がつけば、暇があればTwitterで他の人たちのつぶやきを眺めてしまうようになりました。
 
ブログとは違って個々のユーザーのつぶやきはかなりゆるいですが、様々な分野の専門家から自分と近い個人投資家に至るまで多様な人の考えが流れてくるのは面白いですし、勉強になることもしばしばです。
 
僕はこちらでしょうもないことばかりつぶやいています http://twitter.com/baboocon ので、始められている方がいらっしゃれば覗いてやってください。
 
②読書量を意図的に増やしていること
 
元々読書は好きでしたが、それほど読むのがはやいわけではなく、量もそれなりでした。
しかし昨年辺りから読書家が多い投資家ブロガーさん達に触発され、読書量も意識するようになりました。
 
今年に入ってからはまず月10冊ペースをコンスタントに続けられることを課して読書に励んでいます。
 
読書記録を管理するために、読書メーター(http://book.akahoshitakuya.com/)というウェブサイトを利用していますが、結構重宝しています。
 
読み終えた本をその場で記録して感想を書いたり、気になった本をチェックするのはパソコンからはもちろん携帯電話やiPhoneから簡単にできますし、読書量が自動的にグラフで「見える化」できるのは良い励みになります。
 
 
__________________________________________
 
 
以上の2点の変化が直接的な原因となって、ブログに費やす時間が大幅に減ってしまっています。
 
とはいうものの、これらの2つの変化そのものが悪いというよりも本当の要因は僕自身の自制心にある気がします。
 
いくらTwitterが面白くてもズルズル観続けていては時間が無駄になるのは他のメディアも同じです。
 
読書もただ時間を多く費やして多く読めればいいというのではなく、メリハリをつけた上で量もこなせるというのでないと身にならないな、とこの約4ヶ月を振り返ってみての反省です。
 
Twitterでつぶやいたりしながらブログの更新もコンスタントにこなしている人は数多くいますし、僕もブログを書くことは誰からも強制されてなどいないのですが細く長く、続けて行きたいと思っていますので、29日か月末辺りにはいくつか更新が滞っている記事を書こうと思います。
 
最後に、折角コメント頂いているのに返事を書かないまま何週間も経ってしまい、コメント下さった方々には大変失礼いたしました。

2009年版バフェットの手紙(3)

どうも更新が滞ってしまっています。

ウォーレン・バフェット氏がバークシャー・ハザウェイ社の株主に宛てて毎年のアニュアル・レポートの中で書いている手紙の最新版を翻訳してみようという試みの続きです。

原文は下記のリンクから閲覧できます。



前回の記事のリンクです。

今回の記事は、バークシャー・ハザウェイ社の中核を成す事業である保険ビジネスについての説明です。

少々長い記事なので、数回にわけてエントリーしていきます。


保険事業

 当社の損害保険事業(property-casualtyを略してP/C)はこれまでのバークシャーの成長を背後で支えるエンジンでした。そしてこれからもそうであり続けるでしょう。
それは私達にとって驚くべき成果をもたらしてくれました。
当社の帳簿上にはP/Cの企業群はその自己資本を155億ドル上回る額で記載されており、その額は当社の「のれん(Goodwill)」勘定に配賦されています。
しかし、これらの企業群はその帳簿上の額よりもはるかに高い価値を持っています―そして以下で述べる損害保険業界の経済上のモデルを見ればその理由が分かることでしょう。

 保険会社は保険料を前もって受け取り、保険金請求に対する支払いはその後になります。
極端なケース、たとえばある労働損害賠償請求などでは、支払いは数十年にも及ぶ場合があります。
この「今集金して、後で支払う」モデルは最終的には他者に支払われることになる巨額の資金―当社では「フロート(滞留資金)」と呼んでいます―を私達に提供してくれます。
一方で、私達はこのフロートをバークシャーの利益のために投資することができます。
個々の保険契約と保険金請求は入っては出ていきますが、当社が抱えるフロートの額は保険料のボリュームに対して驚くほど一定なのです。
その結果として、私達のビジネスが成長するにつれて、フロートも同様に増加するのです。

保険料が費用と最終的な損失の合計を上回っていれば、当社はフロートを投資することで得られる投資収入に加えて、保険引受利益を計上します。
この組み合わせは私達が他人のお金を利息ゼロで借りられる―もっと良いことには、他人のお金を預かっていることに対して利息を受け取れる―ことを意味します。
残念なことに、この幸せな結果への期待は激しい競争を招き、それがあまりにも激しいためにほとんどの年では損害保険業界全体としてかなりの額の保険引受損失を引き起こしています。
この損失は事実上、この業界がフロートを保有するのに対して支払うコストとなります。
通常このコストはかなり低いのですが、大災害に見舞われた年にはこの保険引受損失によるコストはフロートを使うことで得られる収入を上回ってしまうことがあります。

ひょっとすると私の見方はバイアスがかかっているかも知れませんが、バークシャーは世界最高の大規模な保険事業を有していると思います。そして私は間違いなく最高のマネージャー陣を有していると断言できます。
当社のフロートは私達がこのビジネスに参入した1967年の1600万ドルから、2009年末には620億ドルまで成長してきました。
さらに、当社は現在7年連続で保険引受利益を計上しています。
私は当社が将来も大半の年において―全ての年ではないのは間違いありませんが―保険引受業務で利益を上げられる体質を継続していけるであろうと信じています。
もしそれが出来れば、当社のフロートはコストがタダとなり、まるでそれは誰かが620億ドルを当社に預けてくれ、私達はそれを利払いなしで自社の利益のために投資することが出来るのと同じことなのです。

ここでもう一度、コストがタダのフロートは損害保険業界全体として期待できる結果ではないということを強調しておきます。
ほとんどの年において、保険料は保険金請求と費用を賄うには不十分な額でした。
その結果、業界全体の自己資本利益率は何十年間もS&P500によって達成された数値をはるかに下回ってきました。
バークシャーに存在している卓越した経済性は当社が普通ではないビジネスを経営する卓越したマネージャー達を有しているからこそです。
当社保険事業のCEO達はバークシャーに何十億ドルもの価値を付加してくれており、皆さんの感謝を受け取るに値します。
私にとって、このオールスターについてお伝えすることは喜びです。


今回はここまでです。

保険ビジネスが生み出す投資可能な資金「フロート」についてはバフェット氏は毎年の様に株主への手紙の中で書いていますが、今年はバーリントン・ノーザン鉄道の買収で新規株主が増えたこともあり、例年より分かりやすく説明してくれている気がします。

保険フロートがもたらす効用は散々語り尽くされていると思いますが、それにしても1311億ドルの株主持分に620億ドルのフロートをコストほぼゼロで上乗せして運用できるというのは、資本コストを3分の2に抑えながら1.5倍のレバレッジをかけられる理屈ですから、ものすごく美味しい話です。
もちろん、バフェット氏が言っているようにほとんどの保険会社はその特性を活かせていないということになりますが・・・。

現在の保険ビジネスとしてのバークシャーの強みはその資金力と信用力、そしてバフェット氏とバークシャーのネームバリューによるところが大きいのだと思いますが、それにしても保険のような参入障壁の低いビジネスに早い段階で自分の能力とマッチする魅力を見出したバフェット氏の着眼点も素晴らしいと思います。

(続く)

2009年版バフェットの手紙(2)

前の記事からずい分間が空いてしまいました。

ウォーレン・バフェット氏がバークシャー・ハザウェイ社の株主に宛てて毎年のアニュアル・レポートの中で書いている手紙の最新版を翻訳してみようという試みの続きです。

原文は下記のリンクから閲覧できます。




前回の記事のリンクです。

今年の手紙の内容は。昨年11月に発表し、先日完了したバーリントン・ノーザン・サンタフェ鉄道の買収により大幅に株主が増加したため、バークシャーの株主として知っておくべき事項の説明に多くが割かれています。

今回紹介する部分も「私達がやらないこと」と題して、バークシャーが他のアメリカの大企業と一線を画している企業統治の方針などを説明しています。



私達がやらないこと

 ずいぶん前のことですが、チャーリーが彼の最も強い大望を打ち立てました。「私が知りたいのは自分がどこで死ぬかということだけだ。そうしたらそこへは決して行かないから」
このちょっとした知恵は偉大なプロシア人数学者のヤコビが難解な問題を解く手助けとして「逆さまにしてみるんだよ、どんな時でも逆さまにしてみるんだ」と助言していたのに示唆を得たものです。
(この逆転のアプローチはより身近なレベルでも挙げることが出来ます。カントリー・ソングを逆さまに歌ってみてください。そうすればたちまちあなたは自分の車、家、そして奥さんを取り戻せるでしょう。)

 ここでは、バークシャーにおいて私達がチャーリーの思考をどのように適用しているかの例をいくつか紹介します。

●チャーリーと私は、たとえその製品がどんなに興奮するものであっても、その将来を評価出来ない企業を避けています。過去、自動車(1910年)や航空機(1930年)、そしてテレビジョン(1950年)といった産業に驚くべき成長が待ち受けているであろうことを見通すのに、卓越した頭脳は必要ありませんでした。
しかしその未来にはそれらの業界に参入してきたほぼ全ての企業を葬りさることになる競争のダイナミクスも包含していました。そして生き残った企業でさえも重傷を負って撤退する傾向にありました。

チャーリーと私がある業界についてこの先劇的な成長を遂げることがはっきりと見通せたからといって、その競合企業同士の戦いの首位に立つ企業の利益率や資本利益率がいくらになるか判断できるわけではありません。
バークシャーでは、私達はこの先数十年間の利益がかなりの程度予測可能であるビジネスに留まり続けます。たとえそうしたとしても、私達は数多くの失敗をすることになるでしょう。

●私達は見知らぬ誰かの親切に依存するつもりはありません。「大きすぎて潰せない」はバークシャーの予備位置ではありません。
その代わりに、私達は常に何か問題が起こってどうしても現金が必要になった時は自身の流動性のごく一部で賄えるように備えています。
さらに、その流動性は継続的に私達の多数のそして様々な企業群からあふれ出る利益により供給されるでしょう。

2008年9月に金融システムが心停止状態に陥ったとき、バークシャーは金融システムに流動性と資本を懇願する側ではなく、それらを供給する側でした。
危機の最高潮に、私達はビジネスの世界に、私達以外では連邦政府しか助けの手を差し伸べられなかったであろう、155億ドルという金額を注ぎ込みました。
そのうち90億ドルは私達の目に見える形での信任票を一刻の猶予もなく必要としていた、高く評価され以前は安全であるとみなされていた3社の米国企業の資本増強に投じられました。
残りの65億ドルは、他のあちこちでは混乱が支配する中で中止されることなくリグレーの買収資金の援助に充てられました。

私達は当社の最高峰の財務力を維持するために法外な犠牲を払っています。当社が常時保有している200億ドル強の現金同等の資産からは現在わずかな利回りしか得られていません。
しかし、そのおかげで私達はぐっすり眠れています。

●私達は概ね、多くの子会社を一切監督も監視もすることなく、独自の運営を任せています。
それにより、経営上の問題を発見するのが遅れたり、チャーリーや私に相談していたなら賛成しなかったであろう事業運営・資本配分上の決定がなされたりすることが時としてあります。
しかし、当社の大部分の経営者達は私達が与えた独立性を大いに活用しており、大規模な組織では滅多に見られない貴重な株主本位の姿勢を維持することで私達の信任に報いてくれています。
私達は息の詰まるような官僚主義のせいで決断がなされるのがあまりに遅い―あるいは全く行なわれない―ことによる多くの見えざるコストよりも、ごく少数の誤った決断による目に見えるコストで苦しむ方がマシだと考えています。

BNSFの買収に伴って、私達は今や約257,000人の従業員と文字通り何百もの異なった事業単位を有しています。私達はそのどちらももっと欲しいと願っています。
しかし私達はバークシャーがいくつもの委員会や予算プレゼンテーションや何重もの管理職であふれ返るような集団になることは決して許しません。
その代わりに、私達は個別に経営され、ほとんどの意思決定が現場レベルで行なわれる、中規模から大規模なビジネスの集合体として運営していくことを計画しています。
チャーリーと私は自身の責任を資本配分、企業リスクのコントロール、経営陣の選任そして彼らの報酬を決定するのみに制限しています。

●私達はウォール街の指示を集める試みは一切していません。メディアやアナリストの解説に基づいて売り買いを行なう投資家は私達の望むところではありません。
その代わりに私達は、自身の理解でき、その方針に共感できるジネスに長期投資したいと願うパートナーとしてバークシャーに加わってくれる人々を求めています。
もしチャーリーと私が数人のパートナーと小さなベンチャーを始めるとしたら、私達は共通の目標および運命を共にすることで株主と経営者の間の幸せなビジネス上の「結婚」が出来ると知っていて、自分達に共感してくれる人達を探すでしょう。規模が巨大になったとしても、その真実は変わりません。

気の合う株主集団を構築するために、私達は株主の方々と直接的そして有益な情報を伝えるよう務めています。
私達の目標はもし我々の立場が逆であったら知りたいと思うことを皆さんに伝えることです。
それに加えて、私達は四半期及び年次の財務情報を、株主の方々、そしてその他の投資家たちに取引のない日に当社の多面的な企業体に何が起こったかを読みこなす十分な時間を持てるよう、週末の朝早くにインターネット上で開示するよう務めています。
(時には、SECの報告書提出期限の関係でやむを得ず金曜日以外の開示になる場合もあります。)
こうした事柄は2、3の段落では十分に要約することも、ジャーナリスト達が時として捜し求めるような目を引く見出しにすることも出来ません。

昨年私達はサウンドバイトがいかに誤って報道されるかという一つの例を目の当たりにしました。昨年の手紙の12,830語の中に、以下のような文がありました。
「たとえば、私達は経済が2009年を通じて沈降するだろうと確信を持って言えますし―そしてこの点に限れば、恐らくそれ以後もさらにそうなるでしょう―しかし、その結論は私達に株式市場が上がるか下がるかといったことは教えてくれないのです。」
多くの報道機関は、この文章の前半部分のみを、それがどのように締めくくられているかには一切触れないままに報道し―実際のところは、騒ぎ立て―ました。
これは恐るべきジャーナリズムだと、私は思います。
誤った情報を伝えられた読者や視聴者達は、チャーリーと私が株式市場が悪い方に動くと予見していると考えたかも知れませんが、私達は件の文章ではもちろんのこと、他の場所でも市場の予想は一切していないと明言していました。
煽情主義者に誤って導かれた投資家は大きな対価を支払いました。ダウ平均は昨年の手紙が公開された日に7,063の終値でしたが、昨年末には10,428の終値でした。

私達が経験したこのような体験をいくつかすれば、なぜ私が皆さんとのコミュニケーションが出来るだけ直接的かつ省略されない形であることを好むのか理解して頂けると思います。

*********************************************

それでは、バークシャーの事業の詳細をみていきましょう。
当社には大きくわけて4つの事業部門があり、それぞれ他部門とは異なるバランスシートや損益計算書勘定となっています。
それゆえ、標準的な財務諸表のようにそれらを一つにまとめてしまうことは、分析の妨げとなってしまいます。
ですから、チャーリーと私が眺めているのと同様、これらを4つの切り離された事業体として紹介していきます。



以上で、今回の段落は終わりです。


一昨年の金融危機の最中にバークシャーがゴールド万・サックス、ゼネラル・エレクトリック、リグレーへの大型出資を行なったというのは大きなニュースになりましたが、改めてそれが可能だったバークシャーの財務力と常日頃からの慎重さ、チャンスとみるや迅速に行動に起こせる機動力を感じさせる一件だったと思います。

また、昨年のバフェット氏の手紙の内容を報道機関が部分的に取り上げ、誤解を招くような形で報道した、と述べています。

確かに、マスコミに頻繁に取り上げられる大富豪バフェット氏の発言は、時に本人が意図しない形でセンセーショナルに報道されることはあるんでしょう。

バフェット氏もこの手の報道には憤慨されているようで、バークシャーの株主にはどうかそのようなニュースには耳を貸さないで欲しいという思いが感じられます。

(続く)