babooconの雑記

東京都在住、アラサー個人投資家のつれづれ日記。

オオゼキ(7617)がMBO、上場廃止へ

先週14日に東証2部上場で食品スーパー経営のオオゼキ(7617)が創業者一族によるMBO(マネジメント・バイアウト)により上場廃止を目指す、とのIRを発表しました。

※同社発表のIRはこちら


オオゼキは東京都世田谷区を中心に東京・神奈川・千葉で約30店舗を経営する食品スーパーで、
住宅密集地に絞ったドミナント出店と店舗別に適した仕入れを行なうなどの個店経営が特色です。

業績も21期連続増収増益無借金経営の優良企業で、
僕も投資はしていないものの、そのうち機を見て投資してみたいと思っていた企業だったのですが・・・。


上記のIRによると、公開買付価格は3,750円で、同社普通株式の14日終値である3,010円に25%弱のプレミアムを加えた価格になります。

MBOによって株主から締め出されることになる創業者一族以外の投資家にとっては、
上場以降よほどの高値掴みをしていない限り利益の出る価格水準のようですが、
個人的にはそれでもまだ割安なのでは・・・という印象を受けています。

以下、一つの例としてですが、ウォーレン・バフェット氏が述べている
「1ドルの内部留保が少なくとも1ドル以上の市場価値を生み出しているか」
という評価基準を参考にバリュエーションを行なってみます。


オオゼキは1999年10月に1株5,640円(分割修正後2,820円)で公募増資して株式公開しました。


この公募増資価格と当時の発行済株式数を掛け合わせて新規公開時の時価総額を算出すると、

5,640(円)×6,325,500(株)≒35,676(百万円) となります。


またMBOの公開買付価格と現在の発行済株式数(自己株式控除後)を基に最新の時価総額を算出すると、

3,750(円)×11,704,080(株)≒43,890(百万円) となります。


従って、新規公開時からMBOまでの株式公開期間を通じての時価総額の増加分は、

43,890(百万円)-35,676(百万円)=8,214(百万円) となります。


また、上場直後の2000年2月期時点から直近の2010年2月期第1四半期末時点までの内部留保(利益剰余金-自己株式で計算)の増加額を計算すると、

(24,186-2,149)-(5,453-3)=16,587(百万円) となります。



これは、公募増資に応じてオオゼキに投資し、今までずっと持ち続けていたとしても、
同社が公開後約10年間に事業を通じて上げた利益から配当を差し引いた残りに対して、
株主はその半分の利益しかキャピタルゲインとして享受出来ない結果に終わるということになります。


つまり、3,750円という買付価格が不当に割安であるか、2,820円(分割修正後)という公募増資価格が結果として割高であったか、あるいはその両方だったかということになります。


公募増資に応じた投資家が少なくとも事業の上げる利益に等しい投資成果を得るための買付価格を求めてみます(公募増資時の時価総額内部留保の増加分を加えた額を現在の発行済株式数で割って1株あたりの金額を算出)。

[35,676(百万円)+16,587(百万円)]/11,704,080(株)≒4,465(円)

提示された買付価格より19%高い、という結果が出ました。


以上は非常に大雑把なバリュエーションであり、かつあくまで一つの見方に過ぎませんが、既に大株主で経営陣でもある創業者一族が株を買い取って非公開化する以上、
たとえどんなに良心的であったとしても、彼らが明らかに不利になる(つまり、フェアバリューを上回る)買付価格をはじき出してくるわけはないということの確認くらいにはなるかと思います。


事業としては非常に優秀だと思うのですが、同族経営であるという点で少数株主の利益が必ずしも完全に保護されないのでは、という不安材料が現実になってしまった、とまで言うと、言い過ぎでしょうか。



それにしても、長年にわたって堅調な利益を上げ続けている優良企業がこのような形で株式市場から退場してしまうのは非常に残念です。