babooconの雑記

東京都在住、アラサー個人投資家のつれづれ日記。

2009年版バフェットの手紙(1)

2月27日(土)に、バークシャー・ハザウェイの2009年版アニュアルレポートと
バフェット氏が株主にあてて毎年書いている「会長の手紙」が公開されました。






昨年に引き続き、今年もバフェット氏の機知に富んだ手紙の翻訳に挑戦してみたいと思います。

原文自体もA4用紙18ページと長いため、今回もパラグラフ毎に区切って記事をエントリーしていきます。


まずは、第1パラグラフと第2パラグラフまでを紹介します。

バークシャー・ハザウェイの株主の皆様へ:

 2009年中の当社の純資産の増加額は218億ドルとなり、それにより当社のクラスA株式及びクラスB株式の1株当たり簿価(純資産)は共に19.8%増加しました。過去45年間で(すなわち、現在の経営陣が経営権を取得して以来)、1株当たり純資産は19ドルから84,487ドルに、年率にして20.3%複利で成長してきたことになります。(※)
 バークシャーがつい先日行なったバーリントン・ノーザン・サンタフェ社(BNSF)の買収により、少なくとも65,000人の株主が、約500,000人の既存株主に加えて当社の株主名簿に記載されることになります。私の長年のパートナーであるチャーリー・マンガーと私にとって、当社の全ての株主がバークシャーの事業、目標、限界、そして文化について理解してくれることが重要です。したがって、私達は毎年のアニュアル・レポートの中で私達を導いてくれる経済的原則を繰り返し述べています。今年は、それらの原則は89ページから94ページに記載されており、私はそれをぜひとも全ての方々に―ただし今年は特に、新たに株主となった方々に―読んで頂きたいと願っています。バークシャーはこれらの原則に何十年間も忠実であり、そして私が去って後もずっと忠実であり続けるでしょう。
 この手紙の中で、当社のビジネスの基礎についても説明していきますが、それがBNSFからの新規株主の方々にとっては新入生のオリエンテーション授業に、またバークシャーのベテラン株主の方々にとっては再教育講習となってくれることを願っています。

どのように自己の成績を測定するか

 経営陣のパフォーマンスを評価するための当社の測定基準は、この手紙の表紙に記載されています。当初から、チャーリーと私は私達が何を達成した―または何を達成できなかった―かを測定するための合理的かつ不変の基準を持つべきだという信じてきました。それにより、私達はパフォーマンスを測る矢が壁に刺さったのを見届けて、その後に矢の周りに的の中心円を描くという誘惑から逃れています。
 S&P500を私達にとってのボギー(基準点未満)として選んでいるのは、当社の株主の皆さんはインデックス・ファンドを保有することによって実質的にコストゼロで、簡単にそれと同等のパフォーマンスを得ることが出来るからです。それと同じ結果を得るためだけに、どうして私達にお金を支払う必要があるでしょうか?
 私達にとってより判断が難しいのは、S&P500に対するバークシャーの推移を、どのように測定するかという点です。単に当社の株価の騰落を用いればよいという主張もあります。実際、非常に長い期間をとってみれば、それが一番の測定法です。しかし1年毎でみると、株価の推移はいちじるしく気まぐれなものです。たとえ10年間という期間をとったとしても、測定期間の始まりと終わりがばかばかしいほどの高値や安値であれば、その評価はいちじるしく歪められてしまいます。マイクロソフトのスティーブ・バルマーやGE(訳注:ゼネラル・エレクトリック)のジェフ・イメルトも、経営者としてのバトンを渡された時期に自社の株式がすっ高値で取引されていたせいで彼ら自身悩まされたこの問題について語ってくれることでしょう。
 私達の年次の進展具合を測定するのに理想的な基準とは、バークシャーの1株当たりの内在価値の変化でしょう。哀しいかな、その価値は正確な数字を求めることは出来ません。ですから、私達はその代わりにかなり粗い近似値を使用しています。それが1株当たり簿価(純資産)です。この指標に頼ることには、92ページおよび93ページで述べているように欠点もあります。
加えて、多くの企業の簿価は内在価値を過小にしか表しておらず、そしてそれはまさにバークシャーにもあてはまります。概して、当社の企業群はその帳簿に記載されている価値よりもかなり高い価値を有しています。さらに当社の非常に重要な保険ビジネスに至っては、その差は巨額です。たとえそうであっても、チャーリーと私は当社の簿価が―過小評価ではありますが―内在価値の変化を追跡するための最も有用な指標であると考えています。この測定法によると、この手紙の最初の段落で述べている通り、当社の簿価は1965会計年度の期初以来、年率20.3%複利で成長してきたことになります。
 ここで、もし当社の株価を指標に選んでいたとすれば、1965会計年度の期首以来年率22%複利の伸びを示しており、バークシャーの成績はよりよく見えるであろうことを述べておかなければなりません。驚くべきことに、この年率でみるとわずかな差が、45年間を通じてみると簿価の上昇率が434,057%(2ページ目参照)であるのに対して、株価では801,516%もの上昇率となっているのです。この株価の上昇率は1965年にはバークシャー株は収益性の低い繊維業の資産を妥当に反映して簿価以下の株価がついていた一方で、現在ではバークシャー株が常にその傘下の一流の事業群の帳簿価値に対してプレミアムがついて取引されていることに因るものです。
 要約すると、2ページの表からは3つのメッセージが読み取れます。そのうち2つはポジティブなもので1つはネガティブなものです。第1に、1965年~1969年に始まり、2005年~2009年に終わるどの5年間―41の組み合わせがありますが―をとってみても、それぞれの期間において当社の簿価の上昇率がS&Pの上昇率を上回らなかった期間は一つとしてありません。第2に、市場が上昇した年のうち数年においては当社はS&Pに遅れをとっていますが、市場が下落した11年間においては当社は常にS&Pよりも良い結果を残してきました。別の言葉で言い換えれば、当社の防御は攻撃よりも良く、そしてこれからもその傾向は続きそうだということです。
 大きなマイナスは、当社のパフォーマンス上の優位は当社の規模が大きくなるにつれて劇的に減少してきており、そしてこの面白くない傾向は今後も確実に継続するという点です。もちろん、バークシャーは多くの傑出したビジネスと、才能を最大限に引き出してくれる非凡な企業文化の中で仕事をしている、本当に優秀な経営者集団を有しています。チャーリーと私はこれらの要素が、時とともに平均より上の結果をもたらしてくれると信じています。しかし巨大な塊は自分自身の足を引っ張る錨となり、当社の将来の優位性は、たとえあったにせよ当社の歴史上の優位からみればごくわずかなものになることでしょう。
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(※)このアニュアル・レポート内の全ての1株当たり数値はバークシャーのクラスA株式のものである。クラスB株式の1株当たり数値はA株の1500分の1である。



昨年後半、バークシャーは同社史上最大規模となるバーリントン・ノーザン・サンタフェ鉄道の買収を発表しました。

この買収は年が明けてつい先日完了しましたが、支払いの一部に株式交換を用いて買収したことにより、バークシャーの株主数は大幅に増加することになりました。

以前からそうですが、バフェット氏は同社の株主が増加する度に手紙の中で新しい株主に向けてバークシャーの原則や目標を理解して欲しいとメッセージを投げかけています。

このOwner's Manualは上にリンクを貼ったアニュアル・レポートに毎年記載されている他、日本語版はバフェットからの手紙Amazonリンク)にも載っています。

(続く)