babooconの雑記

東京都在住、アラサー個人投資家のつれづれ日記。

2009年版バフェットの手紙(5)

ウォーレン・バフェット氏がバークシャー・ハザウェイ社の株主に宛てて毎年のアニュアル・レポートの中で書いている手紙の最新版を翻訳してみようという試みの続きです。

原文は下記のリンクから閲覧できます。



前回の記事のリンクです。


今回も保険セクターの続きですが、前回の記事で紹介されたGEICOを含めた4つの保険事業部門の残り3つについて紹介しています。



保険業(3)

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バークシャーの歴史上、とてつもなく重要な出来事が1985年のある土曜日に起こりました。アジート・ジャインがオマハにある私達のオフィスにやって来たのです―そして私はたちまちスーパースターを見つけたのだと気づきました。(彼はマイク・ゴールドバーグによって見出されました。そのマイクは今や聖マイクへと昇格しています。)

私たちはアジートをすぐにナショナル・インデムニティの小規模の、苦戦中だった再保険事業を任せました。長い年月の間に、彼はこの事業を保険業界で比べられるもののいない巨人へと育て上げました。

今日でもわずか30人しかいないスタッフによって、アジートの事業は保険のいくつかの分野で取引規模の記録を更新してきました。アジートは上限10億ドル規模の保険を引き受けます―そしてそのリスクを他の保険会社に再引き受けしてもらうことなく、全て自社で留保しているのです。三年前、彼はロイズから巨額の負債を引き継ぎ、それにより同社が、ある時点では322年の歴史を持つ企業の生存を脅かしたほどの問題を抱える契約を引き受けた27,972の会員(『ネーム』と呼ばれています)との関係をきれいにすることが可能となりました。このたった一つの契約による保険料は71億ドルでした。2009年中、彼はこの先50年以上にわたって私達に500億ドルの保険料を生むと考えられる生命保険の再保険契約の交渉に携わっていました。

ジートのビジネスはGEICOのそれとは正反対のものです。GEICOにおいては、何百万もの少額の契約が毎年毎年更新されています。アジートは相対的に少数の契約を引き受け、その構成は毎年著しく変化します。世界中に、彼は非常に巨額で、かつ普通ではない保険をかける必要がある時に電話すべき男として知られています。

もしチャーリー、私、そしてアジートが沈んでいくボートに乗っているとするなら―そしてあなたが私達の誰か一人しか救助できないとしたら―アジートの所に泳いでいってください。

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当社の第三の保険グループは、ゼネラル・リーです。何年か前まで、この事業はトラブルに陥っていました。それが現在では、当社の保険事業の冠上に輝く宝石となっています。

タッド・モントロスのリーダーシップの下で、2009年のゼネラル・リーは素晴らしい保険引受の実績を上げ、その一方で保険料1ドルあたり非常に巨額のフロート(滞留資金)を私達にもたらしてくれました。ゼネラル・リーのP/C(損害保険)事業と並んで、タッドと彼の仲間達は大規模な生命再保険事業をますます価値ある事業へと育ててきました。

昨年、ゼネラル・リーはついに、1995年以来、私達の世界におけるプレゼンスの鍵となっていた―部分所有にとどまってはいましたが―コローン・リーの100%の所有権を獲得しました。タッドと私は同社の経営陣にバークシャーへの大いなる貢献を感謝するため、9月にケルンを訪問する予定です。

最後に、当社はより小規模の保険会社グループを有しており、その大半は保険業界の中でも変わった分野に特化しています。全体として、これら各社の業績は着実に収益を上げており、下の表が示すように、それらがもたらすフロート(滞留資金)は私達にとって重要です。チャーリーと私はこれらの企業群と経営者達をとても大切に思っています。

ここに当社の損害保険および生命保険事業の全4部門の記録を示します。
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ここで苦痛な懺悔の時間です。昨年、みなさんの会長は完全に自業自得の、とても高くついたビジネスの大失敗を決算するはめになりました。

何年もの間、私はGEICOの何百万人もの上顧客に何か副商品を提供できないかと考えてきました。不運なことに、私はとうとう、自社のクレジットカードをマーケティングするという名案を思いついてしまいました。私はGEICOの顧客は信用リスクも低い傾向があるだろうと考え、私達が魅力的なカードを提供すれば、気に入って頂けるだろうと考えたのです。私たちはビジネスを無事に立ち上げました―それが誤ったタイプのビジネスだったことを除いては。

私達のクレジットカード事業の税引き前損失は私がようやく目を覚ますまでに約630万ドルにのぼりました。それから私達は9800万ドルの不良債権となったポートフォリオを1ドルあたり55セントで売却し、追加で4400万ドルの損失を計上しました。

これは強調しておかなければなりませんが、GEICOの経営陣は私のアイデアに決して乗り気ではありませんでした。彼らは私にGEICOの最上の顧客を得る代わりに、私達は、そう―ノン・クリーム(最悪の顧客)とでも呼びましょうか―を得るだろう、と警告しました。そこで私は自分の方が年をとっているし、知恵もあるとそれとなく示しました。

私は単に年をとっていただけでした。




これで保険セクターについてのパラグラフは終わりです。

ゼネラル・リーは1998年にバークシャー株式交換によって220億ドルで完全子会社化され、今年2月にディールが完了した鉄道会社バーリントン・ノーザン・サンタフェの買収(約265億ドル)以前は、バークシャー・ハザウェイの歴史上でも最大の買収案件でした。

けれどその後、何年にもわたって同社のデリバティブ部門が大きな損失を出したり元CEOがAIGとの粉飾決算に絡んで逮捕されるなど、バフェット氏の大失敗かと言われるほどトラブル続きの会社だったようです。

それもすっかり処理は終わり、現在では順調に業績を上げ続けているあたり、転んでもただでは起きないのがバフェット氏といったところでしょうか。

そんなバフェット氏も昨年はGEICOのクレジットカード事業立ち上げには失敗したようで・・・。合計でも損失は約5000万ドル(50億円弱)ですからバークシャーの企業規模を考えれば微々たるものだと思いますが、正直に打ち明けるあたりはバフェット氏らしいというかなんというか・・・。

まだまだ続きます。