babooconの雑記

東京都在住、アラサー個人投資家のつれづれ日記。

中野孝次「清貧の思想」

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投資とは全く関係ないジャンルの本ですが、あるブログで目に止まって、興味深そうなテーマだったので読んでみました。

著者の中野孝次氏(1925~2004)は生前大の囲碁好きで、亡くなられる直前には同氏の名を冠した20歳以下の若手棋士が参加できる棋戦(囲碁のトーナメント戦)のスポンサーにもなっていた関係で以前から知ってはいましたが、彼の著作を読んだのはこれが初めてです。


初版が刊行されたのは1992年。
戦後の高度経済成長を経てバブル景気に沸き、物作りや金儲けのような物質的側面ばかりが重視される日本を憂えて、古来より日本には兼好や西行池大雅芭蕉といった文化人に代表されるように物質や金銭、権力といったものを尊しとせず、裸同然の生活であるがままに生き、自己と自然を一体化して精神の安息を得る文化が息づいていたことを主張しています。


同書P169より――

「日本にはかつて清貧という美しい思想があった。所有に対する欲望を最小限に制限することで、逆に内的自由を飛躍させるという逆説的な考えがあった。(中略)『徒然草』の次の一段をもって話を始めたのであった。

名利に使はれて、閑(しづ)かなる暇なく、一生を苦しむるこそ、愚かなれ。
財(たから)多ければ、身を守るにまどし。害を買ひ、累(わづらひ)を招く媒(なかだち)なり。(中略)利に惑ふは、すぐれて愚かなる人なり。   (第三十八段)」



この「清貧の思想」をまるごと受け入れてしまうには、現代に生きる僕達はいささか物質的に満たされた生活に慣れすぎてしまった気がします。

けれど、物質的には世界中でトップクラスに満たされていながら、あまり幸せそうに見えない現代の日本。

中野氏、そして昔の日本の文化人の言葉に一度、耳を傾けてみると今までとは少し違ったものが見えてくる下も知れません。