2008年版バフェットの手紙(8)-1
ウォーレン・バフェット氏がバークシャーの株主にあてて書いた手紙の翻訳記事の続きです。
原文はこちら→2008年版会長の手紙
経営状態が困難に陥ったモノライン数社の救済を申し出たニュースを聞かれた方は多いと思いますが、バフェット氏はその提案の顛末と背景についても述べています。
比較的長い章なので、2回に分けて記事にします。
免税債券保険
2008年の初め頃、私達はバークシャー・ハザウェイ・アシュアランス・カンパニー(BHAC)を州や市、その他の地方自治体が発行した免税債券に対する保険会社として立ち上げました。BHACはこれらの有価証券の発行体に対して、債券が一般に売り出される時(1次取引)とその後、債券が既に投資家によって所有されている時(2次取引)の両方において保険を引き受けます。
2007年末までに、このビジネスの主要な参加者であった半ダースあまりの会社は全て、大きな問題に陥りました。彼らの問題の原因はメイ・ウェストによってずっと以前に言い表されていました。「私は白雪姫、でも迷ったの。」
モノライン(債券保険会社のことをこう呼びます)は初めのうちは低リスクの免税債券についてだけ保険を引き受けていました。しかし長年の間にこのビジネスの競争が激しくなり、保険料が下落しました。収益が停滞あるいは下落する先行きに直面して、モノラインの経営者はさらにリスクの高い事業計画に転換しました。この中には住宅抵当債券の保険引受けも含まれていました。住宅価格が急落した時、モノライン業界はたちまち機能停止に陥ったのです。
この年の初め、バークシャーはモノラインの最大手3社の帳簿上の、免税債券に対して発行された保険の全てを引き受けるという提案をしました。これらの会社はいずれも存続が脅かされるほどの危機に瀕していました(各社とも否定していましたが)。当社は約8,220億ドル相当額の債券に対する保証を引き受ける見返りとして1.5%の保険料を要求しました。当社の提案が受け入れられていれば、当社はこれらの債券を所有する投資家が被る全ての損失に対して――いくつかのケースでは保証期間は40年に及んでいました――保険金の支払いを要求されることになっていました。当社の提案はばかげたものではありませんでした。後で述べる理由によって、その提案はバークシャーにとって相当のリスクをはらんでいました。
モノライン各社は即座に、そのうち1社か2社は無礼な言葉を添えて、当社の申し出を断りました。しかし、結局、その拒絶は私達にとっては非常に良い知らせであったことが分かりました。なぜなら、私はひどく安い保険料を提示していたからです。
その後、当社は二次市場において156億ドルの保険を引き受けました。そしてここからが肝心な所ですが、この事業の約77%は既に、それも大部分は前述のモノライン3社によって保険がかかった債券についてのものなのです。これらの契約では、当社は初めに保険を引き受けた保険会社が財務的に不可能な場合にのみ、債券の債務不履行に対して保険金支払いをする必要があるのです。
当社はこの「2次支払い」保険を平均3.3%の保険料で引き受けました。その通りです、当社は少し前、第1に支払い義務の生じる保険を引き受けようと要求した1.5%の保険料よりもはるかに多くの保険料を、2番目の支払い義務で済む保険を引き受けたことで受け取ったのです。1つの極端な例ですが、当社は実際に4番目の支払い義務を負うことに同意し、それにも関わらず1番目に支払い義務を負ったままのモノラインが請求した1%の保険料の約3倍の保険料を受け取ったのです。言い換えれば、他のモノライン3社が先に破綻してからでないと、当社は小切手を切る必要には迫られないのです。
当社が最初に大きな申し出をした3社のモノラインのうち2社はその後かなりの資本増強を行ないました。もちろんこれは、直接当社の助けになります。何故ならこの先、少なくとも短期的には、これら2社のモノラインが倒れることで当社が引き受けた「2次支払い」保険に対する保険金請求に対して支払いを迫られる確率が低くなるからです。2次取引の契約に加えて、当社は37億ドルの1次取引についても、9,600万ドルの保険料で保険を引き受けています。もちろん1次取引については、債券発行体に問題が生じた場合、当社が1番目に保険金支払い義務を負うことになります。
当社は当社が引き受ける保険の背後に、他のどのモノラインよりも何倍も大きな資本を有しています。その結果、当社による保証はそれらの会社による保証よりもはるかに価値があります。このことが、もののわかった投資家が既に他のモノラインに保険をかけているのに、当社から「2次支払い」保険を買った理由の説明になるでしょう。BHACは債券保有者から選択される保険会社というだけでなく、多くの場合ただ1社の許容可能な保険会社になったのです。
それにも関わらず、当社は引受けを行なっている事業について非常に慎重な姿勢を崩していません。そしてこの保険が当社にとって最終的に多くの利益を上げられるものとなるのは、確実な事とはほど遠いと思っています。その理由は単純ですが、私はこれまでその事が金融アナリストや格付機関あるいはモノラインのCEOの口からほんのわずかでも言及されたのを目にした事がありません。
(続く)