babooconの雑記

東京都在住、アラサー個人投資家のつれづれ日記。

「インフレがどれほど株式投資家から搾取するか」 by ウォーレン・バフェット⑥

バフェット氏が1977年5月にフォーチュン誌に寄せた、インフレと株式についての記事の翻訳の続きです。

前回までの章で、バフェットはインフレ率の高い時期に株主資本利益率を向上させるのは難しいと結論づけていました。

(前回の記事はこちら

投資家の等式

たとえあなたが12%という株式のクーポンが多かれ少なかれ変えられないものであることに同意したとしても、まだこの先、その利回りでうまくやっていけるという希望を持つかも知れません。確かに多くの投資家は長い間、それでもうまくやってきました。
しかしあなたの将来の結果は3つの変数によって決定されることになるでしょう。その変数とは、簿価と株価の間の関係、税率、そしてインフレ率です。

まずは少し、簿価と株価についての計算に取り組んでみましょう。
株式が一定して簿価で売られている場合は、話はとても単純です。ある株式の簿価が100ドルで、市場での株価の平均が100ドルなら、企業があげる12%の利益はまた、投資家にとっても12%のリターンを生むでしょう(取引による摩擦コスト分は目減りしますが、ここでは無視します)。
もし配当性向が50%であれば、投資家は配当という形で6ドルを受け取り、さらに6ドルを企業の簿価の増加という形で得ることになります。そして簿価の増加は当然、投資家の持ち株の株価に反映されます。

もし株式が簿価の150%で売られていたなら、状況は変わってきます。
その投資家は同じく現金で6ドルを受け取りますが、150ドルのコストに対してはたった4%の利回りにしかなりません。企業の簿価は依然として6%増加することになり(106ドルまで)、投資家の持ち株の株価は、簿価の150%と一定に評価されるので、同様に6%増加します(159ドルまで)。
しかし投資家の総合利回りは、つまり含み益+配当の利回りは、企業が本来12%を稼ぐのに対して、たったの10%になります。

投資家が簿価よりも下の値段で買った場合、その作用は逆転します。
たとえば、もし株式が簿価の80%で売られていて、同じ利益と配当を想定すると、配当からは7.5%の利回りが得られ(80ドルの株価に対して6ドル)、含み益として6%が得られます―総合利回りは13.5%になります。
言い換えれば、常識で考えれば分かるように、簿価割れの株価で買った方が、簿価以上で買った時よりうまくいくのです。

戦後の期間、ダウ・ジョーンズ工業平均の市場価格は安い時には簿価の84%(1974年)から、高いときには簿価の232%(1965年)までありました。ほとんどの期間では、比率は100%を優に超えていました(今年の春の初めには、110%あたりでした)。
将来、その比率が100%に近い値だと想定してみましょう―それは、株式への投資家は12%の利回りをフルに得ることが出来る事を意味します。少なくとも、投資家はそれを税引前、インフレの影響考慮前で得ることが出来るでしょう。

税引後で7%

12%から差し引かれる税金分はどれほど大きいのでしょうか?
個人投資家にとっては、連邦政府、州政府、そして地方自治体の課す所得税は平均して、おそらく配当に対しては50%、そしてキャピタルゲインに対しては30%になるでしょう。
大多数の投資家はこれよりいくらか低い限界税率かも知れませんが、大きな持ち株がある人の多くはそれよりかなり高い税率を体験するでしょう。新しい税法の下では、フォーチュン誌が先月述べたように、税率の重い都市の高収入の投資家はキャピタルゲインに対する限界税率を最高で56%とされるのです(”The Tax Practitioners Act of 1976”を見てください)。

そこで、それぞれ50%と30%を個人投資家にとっての典型的な税率として使いましょう。また今までの話に基づき、企業は株主資本に対して12%の利益をあげ、5%を現金配当として払い出し(税引後で2.5%)、7%を内部留保し、その内部留保分に等しい市場価値の増加(30%の税引後で4.9%)を生み出すものと想定しましょう。そうすると、税引後のリターンは7.4%になります。
取引に伴う摩擦コストを考えると、この数字はおよそ7%に丸めた方が良いでしょう。私達の擬似債券としての株式という主張をさらに一段階進めると、株式は個人にとっては7%の非課税恒久債券と等価なものと見なすことが出来そうです。