babooconの雑記

東京都在住、アラサー個人投資家のつれづれ日記。

「インフレがどれほど株式投資家から搾取するか」 by ウォーレン・バフェット⑤

バフェット氏が1977年にフォーチュン誌に寄せた、インフレと株式についての記事の翻訳の続きです。

(前回の記事はこちら

ニューヨークでのもっと愉快なこと

法人税率がより低くなるというのも考えにくいことです。アメリカ企業の投資家は既にクラスD株式とでも考えられるものを所有しています。クラスA、B、C株式は連邦政府、州政府、地方自治体の法人税請求権を表しています。
これらの“投資家”が企業の資産に対する請求権を有していないのは事実です。しかし、彼らは企業収益の大きな割合を、それもクラスD株主に帰属する利益の一部の内部留保を累積した株主資本から生み出される利益も含めて、得ているのです。

これらの素晴らしいクラスA、B、C株式のさらに愉快な特性は、それらの企業収益に対する取り分はたちまちに、それも大きく、代償もなく、それぞれのクラスの“株主”の一方的な決議によって(例えばクラスAの場合は連邦議会の決定によって)、増加させることが出来るということです。
加えて愉快なことには、これらのクラス“株式”の中には時として企業の所有権の割合を遡って―ニューヨークで活動している企業が1975年に愕然とさせられたように―増加させることがあるのです。クラスA、B、Cの“株主”達が企業に対する持分をより増やそうと決議する度、クラスD―通常の投資家が所有する株式―に残される部分は減少するのです。

将来のことを考えても、クラスA、B、C株式を支配する者達が長期的に自分達の横取りする分を減らすよう決議すると想定するのは賢明ではないでしょう。クラスD株式はおそらく自分達の分け前を守るために戦わねばならないでしょう。

FTC(連邦取引委員会)からの悪い知らせ

私達が株主資本利益率を増加させる5つの可能性の最後のひとつは、売上高利益率を高める事です。この点に関しては大きな増加を達成出来ると期待する楽観主義者がいることでしょう。そうした人達が間違っているという証拠はありません。
しかし、1ドルの売上について最後に残る税引き前利益に降りていくまでには多くの請求があり、その残りは1ドルの売上に対してたったの100セントしかないのです。その主要な請求者は労働者、原材料、エネルギー、そして様々な所得税以外の税金です。これらのコストの相対的な重要性はインフレ期においても低下するようには思えません。

更に、最近の統計が明らかにしていることは、インフレ期間において売上高利益率が高まるという考えを抱かせるものではありません。
1965年までの10年間は比較的インフレ率が低い期間でしたが、連邦取引委員会によって四半期ごとに報告された製造業の企業全般の年間売上高税引き前利益率の平均は8.6%でした。1975年までの10年間、平均の利益率は8%でした。
言い換えるなら、インフレ率が非常に大きく増加したにもかかわらず、利益率は低下したのです。

もし企業が価格を取り替えコストに基づいて決められたなら、利益率はインフレ期間中増加するでしょう。しかし、ほとんどの大企業は広く信じられているその市場での実力にも関わらず、そうは出来ないというのは純然たる事実なのです。
取り替えコスト会計は過去10年間においてほとんどいつも企業収益を著しく低下させてきました。もし石油、鉄鋼、アルミのような主要産業が本当に寡占的な強制力を持っているのなら、それらの価格決定方針は著しく自制されてきたと結論づけるしかないでしょう。

さて、以上で全てが出揃いました。株主資本利益率を改善できるかも知れない5つの要素は、そのどれも、私の分析では、高インフレ率の期間においてはあまり効果を期待できそうにありません。あなたはこの課題について私よりも楽観的な見方をするかも知れません。しかし、12%前後の利回りは長い間私達と共にあったということは忘れないで下さい。

ここまでのまとめ…
インフレに応じて株主資本利益率(ROE)を改善させるというのは難しそうだ