babooconの雑記

東京都在住、アラサー個人投資家のつれづれ日記。

「インフレがどれほど株式投資家から搾取するか」 by ウォーレン・バフェット⑦

バフェット氏が1977年5月にフォーチュン誌に寄せた、インフレと株式についての記事の翻訳の続きです。

前回までの章では、投資家が税引き後で約7%の利回りを得ることになるだろうという話でした。
(注:1977年当時の米国においての話です)

(前回の記事はこちら

誰も知らない数字

私達に難しい問題を持ってくるのは―インフレ率です。
誰一人として―政治家、経済学者、そして機関の専門家も(彼らは2,3年前に、あちこちを一押しすれば、熟練した印鑑のように失業とインフレ率が反応すると思っていました)、これに対する解答を知りません。

しかし多くの兆候が安定的な物価については否定的であるように思われます。
それらの兆候とは、インフレは今や世界的な現象であるという事実;
我々の社会の主要なグループがその選挙における力を経済的な問題を解決するよりもむしろ移動させるのに役立てているという傾向;
後延ばしに出来るのであれば最も重要な問題(例えば、エネルギーや核拡散について)にさえ、正面から取り組むことを好まないとはっきり示されてきたこと;
そして立法府の議員達の行動が短期的な恩恵をもたらすのであれば、たとえ最終的には複利で積みあがる長期間の苦しみが残るとしても、再選という形で報われるという政治的なシステム、です。

政治的な職に就いている者達のほとんどは、まったく当然なことですが、断固としてインフレに立ち向かい、そして断固としてそれを生み出す政策を支持します。
(しかしながら、この統合失調症によって彼らが現実を見失うことはありません。連邦議会議員たちは彼らの年金が―民営部門で事実上全ての者が当然だと思っているのとは違って―退職後の生活費の変化に連動することを確保しているのです。)

将来のインフレ率に関しての議論は通常、通貨および財政政策の緻密さを精査します。これらはいかなる特定のインフレの方程式の結果を決定する上でも重要な変数です。
しかし、元をただせば、平時のインフレは政治的な問題であり、経済的な問題ではないのです。貨幣ではなく、人間の振る舞いこそが鍵なのです。そして他ならぬ人間である政治家たちが次の選挙と次の世代との間で選択を迫られれば、通常何が起こるかは明白なことです。

そのような広範囲な普遍化は正確な数字を示しません。しかし、私には、将来のインフレ率は平均して7%になる可能性が極めて高いように思えます。私はこの予測が間違っていることを願います。そして恐らく、そうなる(予測が外れる)でしょう。
予測が私達に教えてくれるのは、たいてい未来のことよりもむしろ、予測者のことです。あなたが自分の予測するインフレ率を投資家の等式に因数として用いるのは自由です。しかしもしあなたが平均2~3%の率を見越しているなら、あなたは私のとは異なった眼鏡をかけているのでしょう。

したがって、次のようになります。
利回りは税引き前及びインフレ考慮前で12%、税引き後かつインフレ考慮前で7%、そして税引き後かつインフレ考慮後では、もしかすると0%になるかも知れません。それは大衆にテレビをつけ続けさせるような公式にはとても思えないでしょう。

普通株式への投資家としてあなたはより多くのドルを得るでしょう、しかし購買力は全く増えないかも知れないのです。ベン・フランクリンではなく(“1ペニーを蓄えることは1ペニーを得ることだ”)、ミルトン・フリードマンを読みましょう(“人は資本を投資するよりも、消費した方がましだ”)。

未亡人が気づかないこと

インフレが過去に議会が制定してきたどの税金よりもはるかに重い税であることは、ちょっとした計算ですぐに分かります。インフレという税金には、資本を食いつぶすというとんでもない能力があります。
自分の預金を5%の利息がつく預金口座に入れている未亡人にとっては、インフレ率が0%の時期に利息収入に対して100%の所得税を支払うのと、インフレ率が5%の時期に利息収入に対して全く所得税を支払わないのとは何の違いもないのです。
どちらにしても、彼女は実質の収入が残されないやり方で“課税”されているのです。彼女はお金を使うたびに元本を取り崩すことになります。彼女は所得税率が120%になれば怒り出すでしょうが、それと6%のインフレが経済的に等価なものであることにはどうも気づいていないようです。

もし私のインフレの仮定が正しいものに近いなら、市場株価が下落するからではなく、市場株価が上昇したという事実にもかかわらず、失望させられる結果が起こるでしょう。
ダウは先月の初めには920付近でしたが、10年前から55ポイント上昇しています。しかしインフレ調整をすると、ダウはほぼ345ポイント―865から520まで―も下落したことになります。
そしてダウの構成銘柄が上げる収益の約半分が株主に払いだされずに留保され、たとえそのような結果を達成する為にであっても再投資されたのです。

これからの10年間、ダウ平均株価は単に12%の株式クーポンと40%の配当性向、そして110%の株価純資産倍率とを組み合わせるだけで2倍になるでしょう。
そしてその期間のインフレが7%であれば、1800ポイントで売却した投資家はそれでもやはり、キャピタルゲイン税を支払った後では今日よりもかなり悲惨な結果になっていることでしょう。

私にはこれらの悲観的な考えに対する一部の投資家の反応が聴こえるかのようです。それは新たな投資の領域の困難さがどれほどのものであれ、なんとかしてマシな結果を成し遂げてみせるというものでしょう。
そうした人達の成功はほとんどあり得ないでしょう。そして、総体としても、当然ながら不可能です。もし証券を頻繁に売買してインフレという税金を打ち負かせると思っているのでしたら、私はあなたの売買仲介業者になりたいと思います―しかし、あなたのパートナーにはなりたくはありません。

たとえ、いわゆる非課税の投資家、例えば年金基金や大学奨励基金であっても、インフレという税金から逃れる事はできません。
もし私の7%というインフレ率の仮定が正しければ、大学の会計係は毎年得るうちの7%までのリターンは単に購買力を補充するものだと見なすべきです。奨励基金はインフレの踏み車を上回らない限り、何も稼いでないのに等しいのです。
インフレ率が7%であれば、総合で8%の投資リターンに対して、これらの自分達が非課税だと信じている団体は、実際には87.5%の“所得税”を支払っているのです。


ここまでのまとめ・・・

●投資家が支払う税引き後の利回りを上回るインフレ率が将来起きるとすれば、
名目の通貨価値ベースで資産額は増えたとしても購買力は低下してしまう。